KUMIHIMO | The Art of Japanese Silk Braiding by DOMYO/ 「道明」の組紐 会場構成 ジャパンハウス巡回展

 

「有職組紐道明」のジャパンハウス・ロサンゼルスでの展覧会の会場構成のデザイン。

■結界
大きなギャラリースペースにおいて、小さく繊細な組紐の魅力を引き出すために、神籬のような結界をつくる。
一直線に並んだフレームの配置は、組紐の直線的な形状の直喩でもある。リフレインする結界の中に、History、Structure、Futureの3部構成で展示が配される。
なお、解説パネルなどの説明的な要素はすべて結界の外にレイアウトすることで、組紐だけに集中できる空間を生み出している。

■肌理の集積
結界となるフレームに、ディテールを集積させる。
丁寧でありながらセオリーにとらわれない素材の扱い方をすることで、組紐にふさわしい奥行きのある肌理をもったフレームを作り出している。

・木と胡粉
フレームの材料には胡粉塗りの杉材を用いている。粒子感のある胡粉塗りは、ペンキやオイルステインとは一線を画す。白い胡粉塗りの下に赤みのある杉の杢目がうっすらと透き通る様は、おしろいを塗った肌のような質感を持っている。

・土の根石
フレームの足元は土を焼いた陶製の根石とした。真っ白で工業的なギャラリーに、大地の力強さと質感を持ち込む。古くから続く組紐に取り合わせるには、掘立柱のような素材の取り合わせがふさわしいと考えた。

・仕口
鋭い印象にならないよう角は五厘面を取りつつも、接合部に向かって緩やかに変化させピン角とすることですべての材を同じ寸法としている。これは木組みのセオリーに反するが、あえて「勝ち負け」の序列をつけずにフラットにすることで、軽やかな印象の結界を生み出すためのディテールである。

組紐と対峙すると、視覚や触覚の精度がグンと跳ね上がる。するとそれまで気にならなかった、ギャラリーのプロポーションからペンキ塗りの表情に至るまで、あらゆるモノのクオリティが気になってきて、組紐の精度に及ばないものは雑音として知覚されてしまう。

並のフレームでは繊細な組紐を包む結界とはなりえない。かといって形自体が主張してはならず、ごく簡素でなくてはならない。展示物を引き立てるために目立たずとも空間を劇的に切り替えるための仕掛けが必要とされる。

歴史的組紐の復元品をはじめとする展示品を包む結界が、「肌理の集積」と題したディテールの重ね合わせによって現われている。

Project Year: 2021
Location: JAPAN HOUSE Los Angeles
Exhibition Production: 有職組紐道明 道明葵一郎
Curation: 橋本麻里
Graphic design: 下田理恵
Ceramic works: 安洞雅彦


展覧会概要
https://www.japanhousela.com/exhibitions/kumihimo-the-art-of-japanese-silk-braiding-by-domyo/

飛鳥時代に中国からもたらされた組紐の技術は、千年以上の長きに渡り日本独自の発展を遂げてきました。貴族たちの美意識に合わせて改良され、武家の感覚が加わり、さらに庶民の暮らしの中へと取り入れられた組紐は、現在では帯締めを中心に、和装の必須の工芸として親しまれています。
《KUMIHIMO: The Art of Japanese Silk Braiding by DOMYO》展(2021年12月〜)は、道明が長らく取り組んできた、文化財の復元作品のアーカイブでたどる日本の組紐の歴史的発展、数学・工学系研究により導出される構造的特徴、そして現代の多彩な分野で活躍する才能と組紐の協働を統合し、古くて新しい組紐の魅力を伝えます。

2021年12月から2022年にかけて、JAPAN HOUSE Los Angeles、同São Paulo、同Londonという3館への巡回を予定しています。巡回に先立ち、2021年3月には東京都千代田区の「アーツ千代田3331」にて試行版として《KUMIHIMO by DOMYO》展が開催されました。

 JAPAN HOUSEは、日本の魅力の諸相を「世界を豊かにする日本」として表現・発信することにより、日本への深い理解と共感の裾野を広げていこうという、外務省による海外拠点事業です。2017年にロンドン、ロサンゼルス、サンパウロの3都市に事業拠点を開設。展示スペース、シアター機能のある多目的スペース、物販、飲食、書籍/web/カフェなどの活動を通じて、日本の魅力を発信しています。


有職組紐道明
https://kdomyo.com/

 今展を企画・構成した「有職組紐道明」は、1652年に江戸で創業、現在の東京、上野池之端に店を構えてきました。江戸時代には糸商として刀の下緒、柄糸などを、明治時代以降は帯締、羽織紐を主として取り扱い、現代でも全ての製品を、自社の職人による手染、手組で製作しています。また道明のもう一つの重要な活動に、宮内庁正倉院事務所からの委託を受け、あるいは独自に行った日本各地の寺社、博物館などに伝わる歴史的組紐の調査研究、復元模造があります。これらの活動で得られた組紐に関する広範な技術、知識、資料は、広く学術研究に、そして組紐技術の保存と普及、発展に役立てられています。